さて、今日はゴールデンクロスを取り上げます。チャートで短い線が長い線を下から追い越す、あの場面です。毎朝チャートを眺めていると、この交差は思っているよりよく目に入りますが、そのあと素直に上がった銘柄ばかりではありません。

今回は、交差ができあがるまでを3つの形に分けて順に見ていきます。そのうえで3つに共通する仕組みを確かめ、最後に過信しないための注意点を置きます。

ゴールデンクロスという言葉の見方

ゴールデンクロスとは、短期移動平均線が長期移動平均線を下から上へ抜ける現象です。直近の価格の勢いが長期的な傾向を上回った状態として、上昇トレンドへ転じる可能性を示すシグナルと解釈されます。大和証券の移動平均線の解説でも同様に説明されています。

日足で判定する基本条件は、当日の短期移動平均値が中・長期移動平均値を上回り、前日は下回っていたことです。両線の上下関係が入れ替わった日が判定日になります(OANDA証券による判定条件の説明)。線が触れ合うだけでは足りず、位置の逆転が条件です。ここがポイントです。

第1の形:下降トレンドか保ち合いが続いている

ゴールデンクロスの形成過程は、「下降トレンドまたは保ち合い」「収束」「上抜け」の3段階に分けて説明されます(CMC Marketsの解説)。その第1段階が、下降トレンドか、方向の定まらない保ち合いです。この段階では、短期線が長期線より下にある状態を想定します。

第2の形:短期線と長期線が近づく

下げ止まりや反発が出てくると、短期線の下向きの角度がまず緩みます。長期線は短期線より緩やかに動くため、短期線の変化に遅れて反応し、その間に2本の距離が縮まっていきます。これが収束の段階で、この時点ではまだ交差していません。

第3の形:短期線が長期線を上抜ける

収束のあとも上昇が続けば、短期線が長期線を下から上へ抜けます。ここで初めて交差、つまりゴールデンクロスです。抜けた線がその後も上を向き続けるかは、交差という形そのものには含まれていません。形が成立した事実と、その後の解釈は別のものとして扱いましょう。

3つの形に共通する、平均が動く速さの見方

3つの形に共通しているのは、期間の違う平均値が同じ価格データから作られているのに、変化の速さが違うという一点です。移動平均線は一定期間の終値を平均してつないだ線で、単純移動平均線なら直近N本分の終値を合計してNで割ります(マネックス証券による計算の説明)。

仮の数字で確かめます。直近5日の終値が1000円、1020円、1010円、1050円、1070円なら、5日移動平均は1,030円です。翌日に1100円がつくと、最も古い1000円が外れて1100円が入り、平均は1,050円になります。5日平均は1日で大きく動きますが、より多くのデータを含む長期線は1本あたりの影響が薄まるため、ゆっくりとしか動きません。この速さの差が、2本の線を離したり近づけたりしています。

期間の組み合わせと見え方の傾向
組み合わせ(取引日) 見え方の傾向
10日と30日、20日と50日 値動きへの反応が速く、シグナルの回数が多い。だましも増えやすい
50日と200日 代表的な組み合わせ。ノイズを抑えやすいが、シグナルは遅れ、値動きの一部を逃すことがある

過信しないための注意点と、うまくいかない例

まず、ゴールデンクロスには遅行性があります。過去の価格から計算した線を使う以上、交差が現れた時点で、きっかけになった値動きがすでに進んでいることがあります。発生時点でトレンドが終わっている場合もあり、将来の上昇を保証する予測ではありません。

次に、横ばい・レンジ相場です。株価がボックス圏で動く局面では、2本の線が何度も交差し、上に抜けた直後に反対へ戻るウィップソー、いわゆるだましが起きやすくなります。薄商いの局面や、ニュースによる一時的な変動も同じです。例えば、上抜け後すぐに価格がレンジ内へ戻り、短期線も再び長期線を下回ることがあります。

交差そのものを確定的なサインとして受け止めるのではなく、レンジ相場や薄商い、一時的なニュース変動ではないかを確認する材料の一つとして扱う、という見方もできます。薄商いで出来高が普段より少なくなっていないかは、出来高の見方で説明した内容と合わせて確認できます。どう判断するかは、みなさん自身がチャートを見比べて決めることです。

次回の講座では、この「速さの差」をもう一歩進めて、同じ銘柄の同じ期間に5日・25日・75日の線を重ね、期間を変えると見え方がどう変わるかを扱います。今日の3つの形を思い出しながら、お手元のチャートで線を1本ずつ足してみてください。