さて、ローソク足の解説書を開くと、形に名前がついた図がずらりと並んでいます。同事線、はらみ線、包み線、首吊り線。名前を覚えれば読めるようになる気がしてきます。ただ、私が25年の投資と300回を超える講座で何度も確かめてきたのは、名前と意味を覚えた先に反例が待っているということでした。みなさん、まずは教科書が何を説明しているのかを並べ、そのあとで同じ形が逆に働く例を見ていきましょう。
教科書が最初に示す1本の見方
ローソク足は、一定期間の始値・終値・高値・安値という4つの価格を1本で表したチャートです。実体と呼ばれる四角が始値から終値までの範囲、そこから上下へ伸びる線(ヒゲ)が高値と安値を示します。1本が1日分なら日足、1週間分なら週足、1か月分なら月足と呼び分けます。終値が始値より高ければ陽線、低ければ陰線で、色を変えて表示されます。
パターンの名前は、この4つの数字の並び方と、隣の足との大小関係に別名をつけたものです。ここを押さえると覚える量はぐっと減ります。形を暗記するより、4つの数字がどう並んだ結果その形になったのかを言葉にできれば、名前は後からついてきます。
1本だけで名前がつく形の見方
始値と終値がほぼ同じ値になると、実体がほとんどない十字の形、同事線が現れます。auカブコム証券のテクニカル分析の解説では、これを買い手と売り手の力が拮抗した「変化の兆し」とし、高値圏・安値圏での出現に注意を促しています。
長いヒゲも1本で読む形です。高値付近で上ヒゲが長く伸びた足は、いったん上げたものの続かず、売られて始値の近くまで戻された流れを表します。安値付近の長い下ヒゲはその逆です。陽線は上昇局面に多く、陰線は下落局面に多く現れる傾向があるとされ、画面上でどちらの色が目立つかも局面を見る材料になります。ただしどれも「こう動いた」という記録で、次にどちらへ動くかの答えではありません。
2本の組み合わせで読む形の見方
2本並べて判断する形の代表が、はらみ線と包み線です。前の足が長く、直近の足がその範囲に収まるのがはらみ線。直近の足が長く、前の足を包み込むのが包み線です。どちらも、出現位置と足の色の組み合わせで言われる意味が変わります。
| 形 | 2本の関係 | 出現位置と足の色 | 言われる意味 |
|---|---|---|---|
| はらみ線 | 前の足が長く、直近が範囲内に収まる | 高値圏・前の足が陽線 | 天井サイン |
| はらみ線 | 同じ | 安値圏・前の足が陰線 | 底入れサイン |
| 包み線 | 直近の足が長く、前の足を包む | 高値圏・直近が陰線 | 天井サイン |
| 包み線 | 同じ | 安値圏・直近が陽線 | 底入れサイン |
定義と組み合わせはPayPay証券「実践テクニカル教室」第9回の説明によります。定義には諸説があります。
同じ形が逆を向く首吊り線と勢力線の見方
ここが反例です。酒田戦法の首吊り線は、マネックス証券の解説によると、上放れしたあといったん押し下げられ、強い押し目買いで高値引けした形で、下ヒゲは実体の3倍程度と言われます。上昇局面の高値圏で出れば目先の売りシグナルとされますが、同じ形が下落局面の安値圏で出た場合は勢力線と呼ばれ、逆に買いシグナルとされます。
形は一つ、意味は二つ。形の名前と意味を一対一で並べた暗記表は、位置という情報を落とした時点で半分しか伝えていないことになります。上の表を高値圏と安値圏で分けたのも、同じ理由です。
教科書通りに動かないときの見方
判定そのものが揺れることもあります。はらみ線や包み線をヒゲまで含めて見るのか、実体だけで見るのかは資料によって異なり、どちらを採るかで同じ2本が「包み線だ」「違う」に分かれます。だから単独の形で決めず、相場の状況や他の指標と合わせて確かめることが勧められています。
私の口座にも、教科書通りに動かなかった例が山ほどあります。安値圏の包み線だと判断して買い、その足が底ではなく下落途中の一服にすぎなかった、という形です。あとで同じ銘柄の過去の足を数えると、同じ形は何度も出ていて、底になったのはその一部でした。
形を手がかりに変える見方
では、どう使うか。私が講座で示している順番は4つです。①名前をつける前に、その足の四本値を書き写す。②直前の数十本の中で、その足が高い位置なのか低い位置なのかを確認する。③ヒゲを含めるか実体だけで見るか、自分の判定基準を一つ決めて固定する。④同じ形を同じ銘柄の過去から10本以上探し、その後の数本がどう動いたかを数えて記録する。
④まで進むと、形は「当たる・外れる」ではなく「このくらいの割合でこう動いた」という記録に変わります。四本値の読み方そのものを確かめたい方はローソク足の見方:四本値と基本パターンを、形と一緒に出来高を見る手順は出来高の見方:棒が急増・急減したときの順番に書いています。
最後に、私自身の話をもう一つ。形の名前を覚えた直後が、振り返るといちばん危なかった時期でした。チャートを開いて「これは包み線」「これは同事線」と言い当てられるのが嬉しくて、名前をつけた瞬間に読めた気になっていたのです。名前は過去の形につけたラベルで、次の1本については何も語っていません。あの頃の私に足りなかったのは、形を見つける目ではなく、見つけたあとに数える手間でした。
