「この形は上がります」。講座でそう言い切ったことがあります。翌週、株価はきれいに逆へ動きました。それ以来、私は反例も必ず示すようにしています。あのとき私がしていたのは、チャートを見る作業ではなく、解釈から入る作業でした。画面に何が表示されているのかを一つずつ確かめる手順を、自分が飛ばしていたわけです。
では、株のチャートの見方を、表示されている要素をたどる順番として整理していきます。ローソク足、移動平均線、出来高の3つです。この並びは取引所が定めた分析の規則ではなく、初めて画面を開く方が迷いにくいように、私が講座で使っている学習上の順番です。
一つ目、ローソク足1本の見方
最初に見るのは、画面の中央に並ぶ色のついた小さな棒です。日本取引所グループの解説では、ローソク足は始値・高値・安値・終値という四本値を1本にまとめた表示だと説明されています(ページの更新日は2026年7月14日と記載)。四角い部分が実体と呼ばれ、始値と終値の位置を示します。上下に伸びる細い線がヒゲで、その期間につけた高値と安値です。
始値より終値が高ければ陽線、低ければ陰線、同じなら十字足。証券会社の操作ガイドでも、この3つの呼び名で整理されています。ここでやることは1つだけです。1本を見て、どこから始まり、どこまで行き、どこで終わったかを言葉にする。それ以上の意味づけは、まだしません。実体とヒゲの組み合わせをもう少し細かく追いたい方は、ローソク足の四本値と基本パターンの記事のほうに書いています。
二つ目、重ねて表示される移動平均線の見方
ローソク足の列を見終えたら、その上に重なっている滑らかな線へ目を移します。移動平均線は、一定期間の終値の平均を日々計算して、その点を結んだ線です。5日移動平均なら、直近5日分の終値を合計して5で割る。翌日は、いちばん古い日の終値を外し、新しい日の終値を加えて、また5で割ります。
| 日 | 終値(円) |
|---|---|
| 1日目 | 1,000 |
| 2日目 | 1,020 |
| 3日目 | 990 |
| 4日目 | 1,010 |
| 5日目 | 1,030 |
| 6日目 | 1,040 |
| 1〜5日目の平均 | 1,010 |
| 2〜6日目の平均 | 1,018 |
終値は説明のために私が置いた仮の数字です。計算の手順は、上に挙げた取引所と証券会社の説明に沿っています。
日足では、5日線や25日線が例として挙げられます。線が上を向いているか下を向いているか、ローソク足が線の上にいるか下にいるか。ここがポイントです。移動平均線が示しているのは過去の終値を平均した結果で、これから先の価格を計算した線ではありません。
三つ目、下段に並ぶ出来高の見方
最後に、画面の下段へ。出来高は、その期間に売買が成立した株式の合計で、棒グラフとして表示されます。株価四本値の仕様では、普通株式の取引高の単位は株数とされています。棒が前日より高ければ、その日は売買が多かった。低ければ少なかった。ここで読み取るのも、量だけです。
気をつけたいのは、出来高が増える理由が一方向ではないことです。好材料が出たときにも、悪材料が出たときにも、棒は大きく伸びます。棒の高さだけでは、上下どちらへ向かう動きなのかは決まりません。ですから私は、伸びた棒を見つけたら、その日のローソク足が陽線か陰線か、線がどちらを向いているかへ目を戻すようにしています。急増・急減した日の確認手順は出来高の見方の記事にまとめました。
3つに共通している見方
ここまで3つを順に見てきましたが、共通点が一つあります。どれも、すでに起きたことの記録だということです。四本値は値段の記録、移動平均線は終値の平均の記録、出来高は株数の記録。観察した事実はここまでで、「だから上がる」「だから下がる」は解釈です。この境目を自分の中で引けるかどうか、私の講座でいちばん時間をかけるのはそこです。
順番にも理由があります。1本の中の一日、期間の流れ、その日に動いた株数。狭いところから広いところへ視野を広げる並べ方で、逆から入ると、数字の意味を確かめる前に線の形の話になりやすい。私が講座で言い切ってしまった日も、まさにそうでした。
順番どおりに見ても外れるときの見方
では、3つを順に確認すれば当たるのか。そうはなりません。テクニカル分析が示唆するとおりに将来の値動きが進むとは限らず、ゴールデンクロスが出たあとに下落する例も紹介されています。2本の線が交差するまでを形に分けて見る話は、ゴールデンクロスの見方の記事のほうに。私自身の口座にも、教科書どおりに動かずに損をした記録が山ほど残っています。順番は、観察を取りこぼさないための手順であって、当たるための手順ではありません。
過去と比べる前に確かめる調整の見方
もう一つ、初めてチャートを見る方が引っかかりやすい点を挙げておきます。数年分を表示したとき、株式分割や併合をまたぐと、その前後で価格の水準が変わって見えます。分割・併合を考慮した調整済みの株価と、調整前の四本値は、別のものとして扱われます。J-Quantsの調整済み株価では、現金配当は調整対象に含まれません。昔の価格と今の価格を並べて「半分になっている」と読む前に、見ているチャートが調整済みかどうかを確かめる。ここは一度覚えておくと、長く役に立ちます。
では、今回の宿題です。みなさんがふだん名前を目にする銘柄を一つ選び、日足チャートを開いてください。①直前の1本について、四本値の4つの数字と、陽線・陰線のどちらかをノートに書く。②5日線が上向きか下向きか、ローソク足は線の上か下かを書く。③出来高の棒を前日と比べて、高い・低い・ほぼ同じのどれかを書く。これを3営業日続け、4日目に最初の日のメモを読み返します。解釈は書かなくてかまいません。それでも書きたくなったとき、その一行が自分の解釈だと気づけるはずです。
