画面の上半分にローソク足が並び、その下に、0から100の目盛りが振られた細長い枠がもうひとつ。枠の中を折れ線が上下して、70と30のあたりに点線が横へ走っている——チャートツールを開いたときに、この下段の枠を目にしたことのある方は多いと思います。今日の話題は、この折れ線です。RSIとは、結局のところ何を見ている線なのでしょうか。さて、順番に見ていきましょう。
教科書が「RSIとは」に与えている答えの見方
RSI(Relative Strength Index、相対力指数)は、一定期間の価格変動の強さや勢いを0から100の範囲で表すモメンタム系のオシレーターです。まずこの一文を押さえておくと、このあとの計算の話も、目安の話も置き場所ができます。
見ているのは価格の水準そのものではありません。ある期間のなかで、上がった分と下がった分のどちらに力が偏っていたか。そのバランスだけを取り出して、0から100という決まった物差しの上に置き直したものです。ローソク足が「いくらで取引されたか」の記録だとすれば、RSIは「上げと下げのどちらが優勢だったか」の記録に近い、と私は説明しています。四本値とローソク足の形の見方と並べて眺めると、同じ期間を別の角度から切っていることがわかると思います。
平均上昇幅と平均下落幅から数値を出す計算の見方
計算の骨格そのものは単純です。対象期間の各終値を前の期間と比べ、値上がりした期間は上昇幅を、値下がりした期間は下落幅を記録します。反対側の幅は0とし、下落幅は正の値として扱ったうえで、設定期間全体の平均上昇幅と平均下落幅を求めます。この二つを割ったものがRS、つまり上昇幅の平均÷下落幅の平均で、そこからRSI=100−100÷(RS+1)という式で0から100の数値へ変換します。
数字を当てはめてみましょう。ある期間の上昇幅の平均が30円、下落幅の平均が10円だったとすると、次のようになります。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 上昇幅の平均 | 30円 |
| 下落幅の平均 | 10円 |
| RS(上昇の平均÷下落の平均) | 3.0 |
| RSI=100−100÷(RS+1) | 75.0 |
※ 上の数字は、計算の流れを追うために私が置いた仮の例です。
上げの平均が下げの平均の3倍ならこの水準になり、上げと下げが同じ大きさならRSは1、RSIはちょうど50になります。線が真ん中あたりを漂っているときは、期間内の上げの力と下げの力が拮抗している、という読み方ができるわけです。
期間の設定は日足の14期間がよく用いられますが、固定されたものではなく、変更できます。また、初回の平均は期間内の上昇幅・下落幅から計算し、それ以降は前回の平均と当期の変動を組み合わせて平滑化していく方法があります。つまり、同じ銘柄の同じ日であっても、設定した期間や算定の方法が違えば、表示される数値は変わり得るということです。ここがポイントです。「今のRSIはいくつですか」という問いは、銘柄と期間設定と算定の時点をそろえて、はじめて答えられる形になります。
70と30という目安の見方
70を超えたら買われすぎ、30を下回ったら売られすぎ。RSIの説明でいちばんよく登場する線引きです。ただ、これは伝統的に使われてきた目安であって、確定した売買の指示ではありません。水準そのものも、分析する対象に合わせて調整される場合があります。
講座でここを「ルール」として書き写す方は多いのですが、70という数字が示しているのは、その期間において上げの力が下げの力をかなり上回っていた、という事実だけです。そこから先、翌日以降に価格がどちらへ動くかまでを含んだ数字ではありません。
目安が当てはまらない場面の見方
では、反例を見ておきましょう。強い上昇トレンドが続いている局面では、RSIが70を超えた領域に長くとどまったまま、反転せずに価格が上げ続けることがあります。下降でも同じで、30未満に張りついたまま下げが続く場面があります。ChartSchoolの解説でも、70超・30未満の目安はレンジ相場で有用である一方、強いトレンドでは過熱圏にとどまり得るとして、他のツールや指標との併用が勧められています。
ここが、数値だけで売買を判断できない理由の中心だと私は考えています。70や30を反転の目安として使う見方は、レンジ相場では機能しやすい一方、強いトレンドにはそのまま当てはめにくいものです。強いトレンドの局面でそのまま持ち込むと、いちばん大きく動いている場面で逆を向くことになります。そのため、70超や30未満を反転の合図と決めつけると、だましになることがあります。
数値を単独で置かないための照らし合わせ方
では、どう使うか。RSIの水準をそれ単体の売買シグナルとして扱わず、価格の動きやトレンドといった他の情報と照らし合わせて確認する、という使い方があります。私が講座で受講生に並べてもらう順番は、次の三つです。
- まず画面の上半分、価格の側を見る。2本の移動平均線が交差するまでの3つの形を手がかりに、今がレンジなのか、一方向へ傾いたトレンドなのかを自分の言葉にする。
- 次に、その動きにどれだけの売買が伴っていたかを出来高の棒の高さで確かめ、気になった日付を書き出す。
- 最後に、表示しているRSIが何期間の設定で、日足か週足かどちらの足で計算されているかを確認する。
この三つをメモに書き出してから、あらためて70や30という数字を眺めます。順番を逆にして数値から入ると、あとの二つは数値を裏づける材料としてしか目に入らなくなります。何を採用するかはみなさん自身の判断ですが、順番だけは動かさないようにしています。
70という数字で手放した、私の失敗の話
最後は自分の口座の話で締めます。個人投資歴25年のあいだ、教科書どおりに動かずに損をした例は山ほどありました。RSIについても、下段の線が70を超えたのを見ただけで、買われすぎ、だから戻ると決めつけ、教科書どおりに動かず損をしたことがあります。頭にあったのはその一文だけで、価格がどちらに傾いているかも、その設定が何期間になっているかも、確かめていませんでした。
数値を読む前に、まず画面の上半分へ目を戻す。それだけのことですが、私はそこを飛ばして損をした覚えがあります。みなさんも、チャートにRSIを表示したときは、一度立ち止まってみてください。